専門知識は操作しながら学習させたい

Desigeonを使うと多くの場合、キャラクタの能力値を活用するゲームができあがります。

数値に対するプレイヤーの興味は、その価値を意識させたときに生まれるのだと思います。言葉で説明したり、ゲーム的アクションが起こる前に表示しても価値が見えません。価値が見えないうちはゴミ情報ですから、見れば見るほど眠くなる、興味を無くす恐れがあります。

数値への興味がないところから始まる

ツールと向き合うシナリオ作者の目の前には、編集項目がありますから、値の設定を考えることにエネルギー注ぎます。そのことに疑問を抱きません。私はここが気になります。

思ったのは、能力値というのは数値であって、それ自体にはゲームプレイヤー側が興味を持っていないということです。シナリオ作者とは入り口が違います。

例えばジャンケンゲームに「勝率」というパラメータを作るとします。これが何を表すかは分かりますでしょうか。私は二つの意味を想像しました。

「勝率」パラメータの意味

  • ジャンケンに勝つ確率
  • ジャンケンに勝った確率

同じ勝率という名前のパラメータでも、上の二つの意味は違います。前者は今後の勝率に影響し、後者は実績を表すのみで今後の勝率には関係ありません。

Desigeonでは身近に設定項目があり、すぐに設定できますから、こういったことを考えて入力するだけで終わってしまいます。

ですが私は、勝率というパラメータを上のどちらの意味として使ったとしても、ジャンケンをするときのプレイヤーはそれについて興味を持たないと思います。特にゲーム開始直後はそういう傾向がありそうです。

興味を持ってもらえないことを序盤に提示して、プレイヤーにいい影響を及ぼすとは考えにくいです*1

プレイヤーは操作することに興味がある

ジャンケンをするときのプレイヤーは、武器であるグー・チョキ・パーいずれを出すかを考えます。このとき、グー・チョキ・パーという情報に比べて、単なる「勝率」という数値は相対的にどうでもいいはずです。

では実際にジャンケンをするとき、以下のように表示されていたらどうでしょう。

  • チョキ:60%
  • グー:85%
  • パー:25%

今度はパーセント値を表示しました。

ですが注意です。ここでは「それが何の数値であるか」を伝えていません。

数値の意味は示していませんが、グーチョキパーを選ぶ際にこれが表示されていたら、プレイヤーとしては意味が気になりませんか?

数値の意味が気になったら、プレイヤーは自ら意味を調べるか、試行錯誤して数値の意味を理解しようとするはずです。興味を持ってもらえるなら、数値を表示する意味があるし、数値の詳細を作者が定義する価値が出てきます。

操作に必要な数値であるか

私が思うに、能力値というものは「操作に必要な(有用な)情報であるか」という見地が欠けると、プレイヤー向けの大事な目的を見失うのではないかと。

ゲームを象る「前提情報」として実装すると、あまり役に立たないのだと思います。

例えば、操作が絡まず失敗しやすそうな動機づけが以下の例です。

定義の時点で「操作」を意識しておらず、これだけ考えても失敗しそう

  • 戦士は筋力が高い
  • 盗賊は器用が高い
  • 魔法使いは知力が高い

戦士の筋力が高いことは、その通りなんでしょう。そう設定すればいいのだと思います。

ただ、戦士の筋力が高いことを伝えること自体は目的ではないですよね。作者の脳内世界を伝える場所はゲーム全体であって、事前のマニュアルやキャラクタ情報シートの中ではないと思います。

プレイヤーが戦士という駒を使って操作するとき、筋力の価値を実感させることができれば、「戦士=筋力」の印象が定着して、筋力を見たり育てたりすることが目的になりうるのです。

プレイヤーは操作に興味がある

ゲームを遊ぶ際にプレイヤーが興味があるのは、操作の概念だと思います。入り口に立ったプレイヤーの頭には、数値の価値にも育成にも興味がありません。

ゲームのどこかに「筋力」と表示されていることは知っていても、それが弓矢のダメージに影響があることを認識するのは、操作に慣れてからです。

まして、筋力5がどれほど大事な数値なのか、3じゃダメなのか、6あればゲームをクリアできるのか、学ぶことは不毛ですし無理です。

同じことは、固有名詞を割り当てるアイテムやコマンドにも言えると思います。剣がないと殴れないから、剣を買うわけです。ファイアボルトを撃たないと勝てないから、撃つわけです。剣やファイアボルトの存在を伝えること自体は、目的ではないわけですから、事前に伝える情報としては慎重になるべきだと思います。

ゲーム側の分かりやすいリード

おそらく、Desigeonのような数値論理ゲームにおいて、分かりやすいリードの仕方は以下のような感じになると思います。

オークが現れた!

  1. 行動を選んで下さい:「攻撃(筋力5)」「ファイアボルト(知力3)」「ポーション」
    • 「攻撃」を選びます
  2. 攻撃するには武器が必要です。どれを装備しますか?「剣(威力3)」「斧(威力4)」
  3. 「剣」を選びます
  4. オークを剣で殴った。3ポイントのダメージを与えた!

何が言いたいのかというと、能力値も武器もコマンドも、操作ほど重要ではないということです。

ご覧の通り、筋力5はコマンドを選ぶときに知ることができれば充分です。武器も攻撃するときに選べればいいのです。事前に店で選んでもらう場合よりも、簡単に興味を持ってもらえそうです。

まとめ

専門性が高い能力値の仕様やコマンドの仕様は、操作しながら学習する形を選べるようにすべきだと思いました。プレイヤーが理解する前に表示すると、つまらなくなって眠気を誘う恐れがあります。

学習というのは、単にテキストを置いておくというだけのものではないのだと思います。必要なときに必要な情報を表示することを指すのだろうと。

プレイヤーが慣れてくれば、それ以降はアイテム収集やキャラクタ育成を能動的にやってくれるはずです。そこから先は、シナリオ作者の皆さんが趣向を凝らすダンジョン探索ゲームの本領が発揮されるんじゃないかと思います。

*1:私はツールを使って能力値の設定を考えるだけでも楽しいですし、データを弄ることを楽しむこともDesigeonの目的の一つです。ですがツールとして欲しいものは編集の娯楽性だけではないので、今回はプレイヤーに向けた表現という観点で能力値の位置づけについて考えてみました

余談

Posted by kumashige